最近見た映画
2009年06月11日(木) [ 映画 ]
ハッピーフライト ★★★★★
飛行機が好きな人も、そうでない人も楽しめる、良質のエンターテイメント群像劇。あらゆる登場人物に絶妙に見せ場を盛り込み、多数の伏線をうまくちりばめている。
いちばん感心したのは灰皿の使い方だ。
専門職の裏側を楽しみながら、無駄なシーンなどひとつもないと感じさせる綿密な脚本がすごい。
ただのドタバタコメディだと思って見たら、呆気にとられることだろう。
103分という上映時間を、長くも短くも感じさせない辺りが完成度の高さを窺わせる。
私自身飛行機に乗ることが嫌いだから、序盤のコミカルパートから何とも言えない緊張感を感じていた。
それはクライマックスへ向けて機内に広がる緊張感と相まって、いっそう映画の面白さを増幅させることになっていたのかもしれない。
赤い文化住宅の初子 ★★★
文化住宅とは、戦後から経済成長期に建てられた集合住宅のことで、おもに関西地方での呼び名だという。たしかに舞台は、広島という設定のようだ。
父親は蒸発、母親を早くに亡くした兄妹が、貧乏をしながら暮らす文化住宅。
成績は良いが高校に行くことを断念する初子(東亜優)と、そんな妹を高校に行かせてあげられないことにもどかしさを感じる兄(塩谷瞬)との微妙な距離感が、映画のなかでは絶妙な雰囲気をもたらしている。
このふたりがあやとりをするシーンが印象的。
きらびやかなネオンより、裸電球の方が好きだという初子が頼もしく映る。
ちなみにラストシーンは、京急長沢駅だった。
リアル鬼ごっこ (音あり) ★★
原作小説は、ずいぶん前に読んでがっかりしたことを良く覚えている。いまで言うならケータイ小説と同じ類のがっかり感である(ケータイ小説を読んだことはないが)。
それでもプロットとアイデアが支持されているのだろう。
この作者の作品は、いくつも映像化されている。
『リアル鬼ごっこ』は、原作と映画では、ずいぶんと物語上の設定が改変されている。
原作では未来の話だったが、映画ではパラレル・ワールドになっている点が、最大の肝である。
これは映像化する上で仕方なかったことかもしれないが、結果としては原作と映画ではだいぶ世界観の異なる作品になっている。
原作では物語の主が鬼ごっこであり、『バトル・ロワイアル』的な緊迫感がいちばんの見どころであったはず。
そういった点は映画では鳴りを潜め、別の方向へ主軸が動かされている。
そこだけは原作の方が良かったなと思った。
ZOO ★★
乙一の短編小説を原作とした、オムニバス映画である。乙一の小説は非常に視覚的で、読んでいて頭の中に容易に情景を思い浮かべることができる。
映画を見たわけでもないのに、後になって「映画」として見た記憶が残ってしまうほどだ。
この『ZOO』も映画になっていることは知っていたが、長い間すでに「映画」を見た気分でいたものだ。
じっさいに映画を見終えたいまも、読んだ後に見た「映画」の方が、より映画的だったように感じる。
たしかに「SEVEN ROOMS」などは、イメージどおりに7つの部屋が再現されていた。
しかし、表現力においては乙一の書いた字面の方がはるかに映像的であり、容赦のない恐怖感を覚えた。
それでも全5編となる本作品は、小林涼子や市川由衣や神木隆之介や村上淳など、多彩な役者の演技を楽しむという点では悪くないものであった。
ダ・ヴィンチ・コード (音あり) ★★★
荘厳な雰囲気の宗教的ミステリーであり、シリアスなサスペンスでもある。時折挿入される歴史上の一場面は、ここぞとばかりに金と労力をかけた(ように見える)まさにスペクタクル。
キリスト教の観念に乏しい私のような日本人には、正直どこまでがフィクションでどこまでがノンフィクションなのかがぴんとこない。
懐かしいテンプル騎士団という言葉は、昔歴史の授業で習ったような気がする。
叫 (音あり) ★★★
黒沢清監督・脚本、役所広司主演のミステリー・ホラー。派手な効果音や音楽を極力排し、物語は淡々と進む。
現実の世界ではBGMなど流れないと言わんばかりのリアリティのなかで、サイキックな出来事に襲われ続ける主人公。
かわいいだけの女優を怖がらせることに心血を注ぐホラーもありだが、こういう大人向けの観念的な和製ホラーがあってもいい。
黒沢清・役所広司コンビだと、似たようなテイストの作品が多いのは気になるところだが。
シムソンズ ★★★
実在のカーリングチームをモデルとした青春スポーツ映画。カーリングにスポットを当てたという点以外は、本当にどこにでもあるさわやか青春スポ根ものであり、内容にもあまりひねりはない。
もはやテンプレートとなったストーリーに、キャストと常呂という町を当てはめただけである。
多少無理のある都合のいい展開が気にはなるが、この手の映画がじつは嫌いではない。
その時に旬の俳優をふんだんに使って、どれだけ瑞々しくさわやかに、それでいてどこかに切なさを感じさせる作りになっていればいいのである。
若い役者たちのいちばんいい時をフィルムに残すという意味でも、こういう映画は定期的に制作する意味はあると思う。
宇宙戦争(2005) ★★★
公開当時、微妙な出来だという論評が多かった気がするが、そんなに悪くはないなと思った。とくにいいのは、何が起きているのかほとんど説明がないまま終盤まで突っ走っていく点である。
つねにトム・クルーズという一個人の視点でのみ物語は進む。
何だか分からない雷や突風が吹き荒れ、何だか分からないものに街が破壊され追い立てられる。
途中マスコミのクルーによってほんの少し断片的な情報は得られるが、それとて根本的に説明が付いているわけではない。
こういう時、映画のヒーローは事件を解決に導く専門的な知識を持っているか、隆々とした筋肉で敵をはね除けたりするが、トム・クルーズにはそのどちらも備わっていない。
家族を守ろうとする微力な地球人のひとりである。
不気味なサイレンを打ち鳴らす得体の知れないトライポッドに四苦八苦する姿は、十分に「リアリティ」を感じさせるものであった。
[関連]『宇宙戦争』予告編 (Secret Messages)
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